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500pxでフェレットカレンダーをつくる

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1週間前に写真SNSの「500px」についての所感を書いた。写真を買う側からみたときにどうか?ということに始まって全体的な見方をしてみた。そこで今回は実際に写真を買って使ってみる様子をお届けしよう。(実験的に文体を変えてみたことについてはスルーで)


フェレットカレンダーをつくる

フェレットは素晴らしい生き物だ。ほら、こんなに愛らしい!
ぴぇろ〜ん

…実はコレ、500pxで買った写真を家庭でプリントしたものをケータイのカメラで5cmくらいから接写したものだ。500pxの写真は今のところ日本からはダウンロード販売しか利用できないが、それでも長辺が1920ピクセルあるのでA3用紙に目一杯プリントしてもポスターなどの用途には足りる。(右図)

なお、写真はJosh Norem氏によるYummyという作品だ。最高パルス(得点)は59.6と、500pxではお世辞にも人気があるとはいえない写真だが、ご覧のとおり買う人はいる。そもそもSNSでは質より量の評価をするので被写体に人気がないとそれだけで上位に表示されにくくなる。北米では野生のリスが人気であり、日本でいう野良猫くらいの扱いを受ける。フェレットはリスの敵だし、配色が嫌われ者のスカンクに似ているというのも良くないだろうし、純粋なペットであるが(野生のフェレットというのはいない。犬と同様に人によって長年かけて馴化された動物なのだが)あまり良い面が知られていないのでイメージが悪いのかもしれない。インドア・ペットなので人目に触れにくいことも関係がありそうだ。
しかし、とにかく、500pxでの評価とは関係なく、選ばれる写真は選ばれるのだ。

ここで写真の買い方はわざわざ書かない。公式サイトや他の方のブログでも紹介があるからだ。一点だけ引っかかったのはBilling addressの入力で、住所等を全て英語で入力したらダウンロードボタンと購入情報が記載された画面に進むことができた。ダウンロード価格は2.99USD(ユーエスドル=米ドル)で外貨建てのためカード会社による手数料がかかって314円だった。ちなみにVISAが提供しているプリペイド式仮想カードも使えたので後払いが嫌な人やセキュリティに不安を感じる人は利用するといいだろう。(仮想カードはVプリカやドコモ口座が有名だ。それぞれ発行手数料等の取り方などが違うので利用頻度に合わせて検討するといいだろう。)

ダウンロードした写真はライセンスの書かれたテキストとともにフォルダに入った状態で入手できる。なお、500pxでダウンロードした写真の利用は個人での利用に限られる。具体的にはパソコンのデスクトップ壁紙やウェブサイトでの使用、そして今回のようなプリントに利用できる。商用利用は禁じられており金品を受け取ったり宣伝に使うこともダメだ。非営利の使用について書かれていないが実際的に使用不可と読める。

写真探し

先に進む前に写真を買うまでの苦労をもう少し書いておこう。私の当初の予定ではフェレットの写真を12枚探してカレンダーをつくるつもりだった。だが紹介できるのは1月分のカレンダーだけだ。なぜか?──写真がないからだ!

500pxでは毎日とてもたくさんの写真がアップロードされているが、そのバリエーションまで多いとは言えない。多くの人が撮りやすい被写体を追い、自分が憧れる写真を撮っている。私はフェレットの写真を検索して気に入った写真をFavoriteしていったが、そこからカレンダーに使えそうな写真は9枚しかなく、しかも販売までしていたものとなると半分以上が脱落した。手厳しく、ニードを満たしていないと書いておこう。

実はフェレットのようなマイナーなペットのカレンダーはファンにとって大変に貴重品である。出版社が取り扱いたくないから存在そのものが希少なのだ。あまり詳しくないがこういう商品は委託販売が普通で、売れ残りは出版社に返品される。が、購入時期が限られるカレンダーは返品イコール廃棄を意味する。確実な注文がないと売りにくいわけだが、書籍より痛みやすいため個人宅へ1つずつ配送するには面倒なことが多い。クレームがついて代品を送ろうものなら利益が出なくなってしまうだろう。まともに扱おうと思えば紙類では高級商品に位置づけないといけない。カレンダーなんて日用品と思ってしまうが、価格や扱いは写真集くらいのものを要求するのだ。

iPhotoでカレンダーづくり

カレンダーをつくる段に進もう!今回はMacなら無料で使えるiPhotoというアプリケーションで作った。とはいえ取り立てて説明することはない。これも各所で紹介されているからだ。カレンダーを作れるアプリケーションは他にもあるので気に入らない点があれば試してみるといいかもしれない。


プリントする

家庭でプリントするときに最も理解が必要になるのはプリント工程だろう。何かしら相談を受けることがあると、だいたいはプリントが巧くいっていないことが多い。少し詳しく書いておこうと思う。
要点を先に伝えると、プリントのコツはプリンター側と用紙側の双方でよいチームワークを発揮できるように気遣ってあげることだ。

今回はCanonのマットフォトペーパーを選んだ。ペーパークラフトに使えるくらいの厚紙で、表面はサラサラしている。ここが紛らわしいのだが、これはフォトペーパーと書いてあるがコートがたっぷりの写真用紙ではなく普通紙の仲間とみるのが適切だ。カレンダーには鉛筆などで書き込みをするだろうからコートがない紙がよい。

そういうわけなので、写真をプリントするからといってプリンターの印刷設定で写真用紙を選ぶと失敗する。この場合、普通紙系の中から最も上質な紙種を選ぶか、ファインペーパーなどと書いてあればそれを選ぶことになる。

もうひとつ注意したいのが印刷品質の設定だ。写真をプリントする際には通常は高品質モードを選ぶものだが、インクと紙の性質や写真の被写体によっては他に適切な組み合わせがある。今回はCMYKの4色インクのプリンタで、K(黒)だけが顔料インク、カラーは染料インクというものだ。染料とは水に溶けるインクで、紙に染み込んで「にじむ」ことで美しいグラデーション表現を助けている。したがって高密度かつ多量に吹き付けられると隣り合う色と不必要に混ざり合ってしまい汚くなる。紙がフニャフニャになるようであればインクが多すぎるとみていいだろう。その場合は標準画質でプリントするか、インク量調節機能があれば吹き付けるインクの量を減らす。コピー用紙は薄すぎてインクを吸い込みきれないので厚手のものにする。それでもダメならコートのある用紙を選ぶしかない。写真が濃い色の場合は(暗い色の場合ではない、真っ赤とかも濃い色だ)、どうしてもインクを多量に吹き付けないといけないので家庭でのプリントは難しくなると覚えておこう。

簡単にいえば白っぽい写真はプリントに失敗しにくい。白とはつまり用紙そのものの色であり、プリンタが余計な仕事をしないから綺麗なままでいられるのだ。何かをマイナスすることで最高の結果を得られるというのは意外にも盲点になっているものだ。
今回の写真は家庭でのプリントに向くという点でも評価が高かったということがいえる。

カレンダーを貼る

できあがったカレンダーの仕上がりは満足のいくものだった!


スッキリと貼りたかったのでカレンダーの写真部分と日付部分を1枚のA3用紙に納めてプリントしたため、写真部分だけでみればB5ほどのサイズになった。もっと拡大してもよかったので2月のカレンダーではそうするだろう。

並んでいるのは今年のフェレットカレンダーで、ペット用品店で2,000円台で売っていたものだ。私は毎年買っている。上側にちょこっと見えているのは絵画である。印刷用途で考えた場合、しばしばポスターとカレンダーは混同されて扱われる。用紙には「ポスターやカレンダーに最適」というような表記があるのだ。しかし、この壁に掛かっているものをよく考えてみてほしい。カレンダーは毎年変わる。だが絵画はこの先の何年もポジションを維持し続けるだろう。私は友人宅等で10年以上も壁面のポジションを維持し続けている「福山雅治」や「ブラッドピット」のポスターを見てきた。ポスターとカレンダーとはポジションを維持できる期間が全く違うということは、写真を撮るときにもポスター向けなのかカレンダー向けなのか意識できることがあるということだ。

その他のtips

ここからはフェレットの話は出てこない(今までもあまり出てきていないが、まぁ写真は出てくる)。ただし、プリントする際に役立つことも書いてあるかもしれないから自由に読んでみてほしい。

解像度

写真を販売する側の人に知っておいてもらいたいのはダウンロード販売の際の制約は「長辺1920ピクセル」ということだ。今回の写真のように短辺が1080ピクセルを超えていても問題ない。つまり、両辺とも1920ピクセルのスクエアもおそらく可能だろう。そしてそのような写真が家庭でプリントされるとき、端から端まで用紙からはみ出させたくないような被写体と構図で撮影されていれば──用紙に余白ができてもいいから写真全体をプリントしたいと思わせる写真ならば──結果的にプリントは凝縮されてdpiが高まる。写真を買った人に対して精細なプリントを要求したくともできないのが代理販売の問題点だが間接的にはコントロールできるという点は覚えておいてもいいかもしれない。

ディスプレイとプリントの差

次の写真を見てほしい。
2倍カワイイ!
…じゃなかった、この写真は上側がディスプレイ表示、下側がA3プリントだ。並べて撮影したのでディスプレイ表示のほうが眩しく、環境光による色味への影響も受けない写りをしているが、実際の印刷結果はとても素晴らしいものだった。
このディスプレイはLG製であり高度な色調整のあるモデルではないが、iPhone4〜4s頃のテクノロジーが使われているので(液晶をLGが作っていたからだが)、多くの人が納得のいく映りを提供している例として使っている。表示色はsRGBに設定していて色味の一致は必要十分なものだった。


それと、23型ディスプレイの1920×1080表示とは95ppiでしかない。このプリントはA3に対してやや余白が出たが128dpiある。A3のプリントは家庭ではこれから普及していくところであり今はまだ「大きくプリントした感」があるが、液晶ディスプレイはPC用なら23型は安価に出回っていてテレビなら30型・40型も一般的になっている。
とすると、プリントのほうが普段見ているディスプレイより高画質なのは考えてみれば当たり前なのだが、実際にやってみると「こんなに大きくプリントしたのにディスプレイで見ているより綺麗!」という感動があるのだ。本当に、額装したくなる良さがある。ユーザー体験というやつだ。

風景のようにそもそも光の透過がある被写体はディスプレイ表示が向いているが、フェレットのようなオブジェクトはプリントして反射光で見たほうが自然で好ましい表現になる。単純にRGBのほうがCMYKより色域が広いからよい、とはならないのだ。ただしグリーンの表現はRGBのほうが得意だとか、いくつか気をつける点もある。代理販売で最後まで責任を持ったアウトプットをおこなうのは大変で、買う側の一般ユーザーも「印刷」と書かれたボタンをクリックする以上のことはほとんど知らない。今後、これらを解決する高機能なプリンターが発表されていくのか、こういった点でアドバイスをする人間がつないでいくのか、視覚の分野はまだまだメチャクチャで整理整頓ができるところがいっぱいあるから面白いのだが、もうちょっと何とかできないものかとも思う。

2月までの宿題を残して

写真を買う側の人はまだ500pxを知らないままかもしれない。それ以前に、ウェブサービスから写真を買って利用するというスタイルが定着していないようにも思う。しかしFacebookが中高年のSNSとなったようにウェブの世界は確実に高年齢化していることは変化を後押しするだろう。日本の生活スタイルでは視覚に対する娯楽的入力はテレビが担ってきたが、それもどんどん変わってきている。小さな頃からテレビを見てきた世代にしてみれば内容に飽き飽きしているということもあるのだろう。万人ウケするように制作した結果、誰の欲求も満たせなくなっているのかもしれない。誰のためでもない、宣伝のための番組。なんとなくだが、視覚への刺激をテレビ以外に求める大人たちが増えているように思う。人間は刺激を欲するもので、刺激が何もないというわけにはいかないのだ。

写真を撮る人にとって、写真がどのように真のフィニッシュを迎えるかを知ることができたなら良かったと思う。また今後4Kディスプレイが普及したときには様子が変わるだろう。風景は巨大なディスプレイで見たときに見映えがするが、今までは画素密度が足りないせいでボヤケとシラケがあったように感じる。この点が4Kディスプレイでは克服されているが、機器が普及するかどうかと静止画を閲覧するために使いやすいかどうかで結末が変わってくる。社会の状況によっても、例えば大勢が夕方には帰宅してゆっくり夜の時間を過ごすならディスプレイを土台にした視覚文化は有利だが、ヘトヘトに疲れて夜も更けてから帰宅する世の中ではディスプレイは好まれないしコンテンツも消費されないだろう。

プリンタのほうも進歩するかもしれない。今は印刷クオリティについては各社横並びで、複合機にしたり自動両面印刷機能をつけたり無線LAN対応したりで差別化を図っているにすぎない。だが、3Dプリンタが物体を生み出すことの本質的な力を証明したことで従来のプリンタについても考える余地が出た。今回のカレンダーはいくらか手間がかかってしまっているが、同様に、あるいはもっと簡単に製本できるだけでも世界は違ってくるだろう。やはり価値のある情報はウェブよりも本の中にある(もっと価値のある情報は人の中だ)。もし膨大な量の電子書籍の中から特定のキーワードに関連した章だけを抜き出した「本」をプリントできたならどうだろう?──ある人はこう書いているが、またある人は違うことを書いている、ということが今までよりもわかりやすくなるはずだ。もっと高度なテクニックとしてテキストマイニングと組み合わせた活用法も考えうる。

と、まぁ、未来に対しては想像が膨らむが、今のところはフェレットカレンダーを1ページつくれただけで大満足だ!これだって今まではもっと多くの知識と技術が必要だったのだ。500pxではダウンロード販売はワンサイズしかなく、ディスプレイで見ても家庭でプリントしても十分なサイズが保たれている。時代が変わったおかげでもあるが面倒なことを考えなくてよくなったのだ。それに伴って作り手も考えを変えないといけないかもしれないが、誰にでも自分の思い通りに何かをつくる力が与えられたら大抵の場合は喜ばれると思う。

今回はここまで。いつかフェレットについて書ける日を楽しみにしているよ。それじゃ。

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