夏バテにつきライト更新でございまする(推敲してないということです)。
さて、当ブログではカナダの写真SNS『500px』を度々ご紹介しておりますがー、ここの面白みは運営が提供しているコンテンツにもあるんです。それが『500px ISO』です。
500px ISO は公式ブログってやつです。(リンク)
でもね、ただの公式ブログだと思ったら間違い。日本の公式ブログやサイトの類いはイメージ戦略的な雰囲気だけのものだったり、コンテンツは消費者に投稿させて井戸端会議的な省エネ運営ってことが目立つんですが、500px ISOの内容の濃さはいかにも北米クオリティです。本拠が北米だから当たり前っちゃー当たり前なんですが、北米の常識でつくってあるので言論が基本です。イコール、英語の長文記事が盛りだくさん。
あっ、英語の長文と聞いて去らないでいただきたい! 頑張ってでも読む価値があります。特に日本のクリエーターにとっては貴重な情報源です。この点に私はかなり危機感を抱いているんです。どういうことか? 以下はちょっとお付き合いいただきたい。
将棋の羽生善治さんが仰っていたことに、インターネットの普及が及ぼした『変化』についての話があります。要約すると、かつて将棋の棋士には得意なスタイルというものが「あった」のですが、今はそういう考え方では通用しないというのです。理由は、対局で用いた戦術が今はリアルタイムに全国の棋士に分析され、翌日には攻略法がインターネットを通じて出回ってしまうからだそうです。つまり『自分のスタイルを持つ』というやり方では通用しない。適宜に最善の手を打てることが重要だというのです。
私はこれと同じことをデザインやクリエイションの世界に感じています。未だに自分のスタイルや自分だけのノウハウがあると信じているような秘密主義の人もいるかもしれませんが、今やたいていのことはインターネットで調べることができますし、それだけのヒントが得られれば残りの部分を埋めて答えにたどり着くのも容易です。
情報の波もまたひとつの戦略です。情報を開示する者は、秘密にしておきたい者よりも優位に立てます。そして開示する者は次に開示する情報を探し生み出していくという動機があるので、実際には閲覧者が把握しきれないほどの情報を抱えていき優位性を失うことはありません。閲覧者はいわゆるプロ市民のような存在になります。結果として、秘密主義者<プロ市民<情報開示主義者、のような階層になっていきます。
500px ISO にはフォトグラフィーのメイキングがたくさんあります。どうやって撮るんだろう? という疑問がズバリ解決。コツの宝庫。こういうのをネタばらしと批難するのは時代遅れです。ディズニーの映画のDVDにだってメイキングやボツネームが収録されているでしょう? それと同じです。あるいは、大人が手品を見るとき、タネがあるとわかっていても驚かされるし楽しめるでしょう? 現代のクリエイションはそのようなフェーズに入っています。
写真だけに言及すると、日本の場合は撮影の仕方については今までも情報があったけれど、レタッチ技術については多くなかったわけです。例えば、写真を扱うデザイナーがPhotoshopとLightroomしか知らなくても不思議ではないです。現実には、Nik、Topaz、OnOneなどもそのスジでは有名なソフトで、各々が作業効率を考えて自分の肌にあったものを選んでいるはずですが、今までは(今もまだ?)秘密のように扱われてきました。これは日本での話です。英語で検索すれば別に秘密でも何でもありません。有名ソフトなのでチュートリアルから何から情報は得られますし、それぞれのソフトにファンがついていて盛んに議論されています。(ちなみに最近の私は主にNikを使ってます)
情報過多とも呼ばれる時代において、クリエーターの役割が少し変わりつつもあるのかなと思う部分も出てきました。私はシニアにグラフィック・映像編集をレクチャーする機会なんてのもあるわけですが、その背景として現在はPCもソフトも低価格化が進み、かつ使いやすくなっていること、そしてお金も意欲もあるシニアが人口に占める割合の関係で絶対数として多くなるため出会いやすいということが言えるんじゃないかと思ったりします。ここでの私の役割はクリエイションを楽しみたい人のサポートです。私が作るのではなく、作るお手伝いをするわけです。そしてこの流れの中で「思ってたより難しいわ」「お手本のようにはできない」「これはお任せしたほうがいいことだ」という声が出てきて、結局は教える側に制作が返ってくるということが起きます。一見、制作を捨てるというクリエーターにあるまじき判断が、実は制作の機会を結びつけてくれたりもするわけです。
このときの『教える』という行為は、予めコース建てたワークショップとは内容が異なります。そもそもPCを使う制作はたいていの材料と道具を内蔵しているためコースに縛られない教習が可能です。教えられる側を縛ってしまうのは教える側の技能不足が原因だとさえいえるでしょう。そのような状況ではインターネットを利用した自主学習のほうが自分のやりたいことに近づけるケースさえあるので、このニーズを汲み取るカタチでも500px ISO のような情報源は有意義なものになります。これに対応するようにクリエーターはさらに一歩先に、より多くの技能を修めていくことが求められているんじゃないでしょうか。
インターネットは確かに変化を起こしました。写真の素人でもどのようにすれば画がつくれるのか知ることができ、その一方でプロでも情報獲得に疎ければ対応できる案件はどんどん限られてしまいます。ただしお客さんが成長しなければ怖くないので素人ばかり相手にする人もいますよね。ヤラしい話ですが私も“便利屋”なので多少そのケがあるのは認めなければいけませんが、商業(※)でやってる人にだって負けない気持ちは持ってるつもりです。そのためにもどんどん勉強はしていかなきゃいけない。500px ISOは今のところHOTな情報源なので、これをご覧になったあなたもぜひ覗いてみてはいかがでしょうか?
(※商業…BtoBのこと。デザイン会社は主にBtoBなので内部デザイナーの私にはライバル心というか気負いがあるわけです。なお商業写真をしてるといえばtoBのことなので雑誌カメラマンとかを指します。街の写真店はtoCなので商業とは言いません。ご商売で写真をしていることと、取引相手が法人であることを混同せぬよう書いてみました。納期や予算の決め方、コンセプト理解といった点にかなり違いがあります。)
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