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iMac Retina 5Kが微妙に欲しい話

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Wish List 特集。先週に引き続きまして、ちょっとコレ欲しいんじゃー、というモノについてサラサラと触れてみます。ここでの結論を先に書いちゃうと、5Kってトコに何かを見い出しているなら「時期尚早」だと思います。けど、Retinaってトコに着目してるなら「即買い」かも。特に既存のiMac 27inchを作業環境にしてるならiMac Retina 5Kは大いにアリだと思います。


iMac Retina 5Kのディスプレイの魅力は店頭で実機に触れてもらえば気づくと思うので割愛しますね。ただ、誤解もあると思うので補足しておきますが、「4Kコンテンツがないから普通のパネルでいい」はウソです。ウソというか雑? そこから始めましょう。

まず、テキストなどのベクター形式のものはクッキリ見えますから、ライターやDTPする人はそれだけでも有難いと思います。私の場合、ディスプレイの視聴距離は70cmほどです。標準的な100ppi前後のディスプレイでは文字の輪郭が甘く見えるせいで「よく見えない」と感じ、気がつくと顔を近づけてしまって余計に疲れたりします(もちろん近づけても輪郭の甘さは変わらない)。

比較として標準的な印刷物では133〜175lpi、荒い印刷の代表だった新聞でも近年は140〜200lpiになっていたりします。数値を単純比較はできないにしても、ディスプレイの100ppi前後とはハッキリと違いがあります。その点、iMac Retina 5Kは217ppiです。これは標準的な高品質印刷(200〜220lpi)と同等の滑らかさが期待できます。

ここで27inchというサイズが重要になってくるのですが、DTPする人はお気づきの通り、冊子体の多くは原寸表示で作業できます。それがiMac Retina 5Kならば217ppiで、です。すごい!…と思わない人は、まぁ、仕方ないですね。でもDTPやってると本当に助かると思います。縮小表示のとき細線が省略されていてドキッとしたことあるでしょ。プリントでも出なくて(ケチって高精細モードにしてなかったりしてね)、校正刷りで見つかればいいんだけど、少部数・低予算の案件でオンデマンド印刷に通すときは即納品で…パーン!

えぇ、私の実体験でした(苦笑)

余談ですけれど、このようにしてRetinaの価値はDTPでは大きいので、今回、27inchモデルに搭載されたのは妥当ですね。21.5inchモデルじゃ原寸表示できないので作業性が悪いですから。Mac Book Pro Retina 15inchからの追加購入って人も多そうです。

ただ、DTP用途で考えると色域の問題があるんです。Apple製品はsRGBを標準に置いてる感じなんですよね。iMac Retina 5Kも ほぼsRGBです。ところが印刷の標準であるJapan Colorの色域はsRGBとはズレてます。通常のワークフローでは、広い色域を持つAdobeRGBのディスプレイで作業しておき、プリプレスのどこかの段階でJapan Colorか 印刷所のプロファイルに変換します。これがsRGBのディスプレイでは印刷の色域のうち 一部の色の具合がわからないので困るわけです。さすがに色相が変わるわけではないですが、とんでもなくズレてしまって雰囲気が台無しってことはあります(これも実体験・苦笑)。

とはいえ色域の問題は今に始まったことでないので回避策があります。作業の開始時に色彩設計を済ませるんです。まぁ、当たり前のことなので書くほどのことじゃないんですが。ちゃんと色見本とカラー値をみて決めれば間違いないのであって、見た目とセンスでやっちゃうとNGってだけです。会社ならAdobeRGBのディスプレイは最低1台あればいいので(色彩設計・変更時だけ使う)、それ以外はiMacで問題なくいけます。制作チームがワークフローを理解し、作業ルールを守ることが大切ですね。これも書くまでもないことでしたが。

本文と無関係に雪が降ってきましたよ

さて、DTPでのiMac Retina 5Kの扱いは以上のようなところでしょう。すでに通常版のiMacを導入しているならワークフローの注意点はクリアされてるでしょうから、Retina 5Kに乗り換えて快適に作業するのはワクワクするような出来事ですね。また、映像系で、素材の編集が多い仕事をメインにしているところでは、iMacはパワーや排熱の問題で採用しにくいので触れません。10秒ずつ素材をつないで色彩はニュートラルに、って仕事をしているところならiMacでやってる会社も見たことありますが、そういうところは制作より企画や編集がメインの会社ですからね。ナレーションのセリフや声の出演を適切に決めることができるという部分が強みなので、ディスプレイがどうのこうの言わないでしょう。

そもそも映像では動体視力を使うので画素密度(Retina)はあまり関係がない。目の前で手のひらを左右に振ってみてください。指紋やシワがどう見えますか? ほとんど見えないでしょう? 目の前にある実物でさえ、動くものとなると詳細には見えないんです。つまり映像で重要なのはタイミングなので、作業段階で4K表示できる必要性は薄いですね。素材が信頼できるなら作業ビューは320px程度でも可能ですもん。4Kというのは40型を超えるような大型液晶テレビに対して拡張的に必要だというだけです。

すしあざらし を思い出しました

最後になりますが、写真についてです。静止画ですから映像とは像の捉え方が違ってきます。やはりDTPと同じで217ppiが光ってきますね。隣り合うドット同士が近いと色がクッキリハッキリするのでトーンジャンプも見つけやすいです。しかし、ここでも問題になるのは色域です。

大雑把にまとめてしまうと、写真の仕事でボリュームの多いゾーンでやってる人にとっては厳しいものがあると思います。ボリュームの多い、コアなゾーン、メインストリームに当たるのは「人物」や「食品・ブツ撮り」でしょう。これらの被写体は色が大切なのでAdobeRGBのディスプレイが必須に思います。出版社やデザイン会社からはAdobeRGBで納品をお願いされるでしょうし。

他方で、「風景」をやってる人ならAdobeRGBのディスプレイじゃなくてもいいのかな? と思ったりします。なぜかというと、空や水面の色、木々の緑色は、元データを見てない人が印刷での色ズレに気がつくことはないからです。紫、藍、水色、黄緑にかけての色は印刷で正確に出そうとしたら大変なものがありますが、これらの変化する色は「風景」に多く、「風景」をメインのビジュアルに据えることは、ほぼない。だから商業ベースでは問題にならないでしょう。

でも、これも最終アウトプットが印刷になるケースの話で、ファインプリントがメインなら やはりAdobeRGBがいいでしょう。とりわけ多色インクジェットは印刷(Japan Color)より広い色域を持っていると言われていますし。

蛇足ですが、sRGBとJapan Colorの色の違いっていうのは、例えるなら、色鉛筆セットで絵を描くときに、AさんとBさんとでは持ってる色鉛筆のメーカーが違うから入ってる色合いが異なってるというイメージです。ところが、AdobeRGBとsRGBの違いというのは100色セットと72色セットの違いみたいなもので、大小の問題といったほうがわかりやすい。それがどのくらい重要かは被写体や表現したいものによっても変わってきます。画家でも4色のペンキしか使わない人もいますからね。とはいえ、100色のほうが懐が深いから色のズレを合わせやすいのはイメージしやすいかなと思います。蛇足ついでに書くと、北米の印刷ではSWOPというのが標準になるみたいなんですが、SWOPはJapan Colorに比べて、よりsRGBに近い色域を持っています。だからAppleはsRGBで十分と考えているのかも。ちなみに、カラープロファイルはインクの違いに基づくので日本の印刷所にSWOPのデータを持ち込まないようにしましょう。

結局、最後工程としてはプリンタによるプロファイル変換を使うかどうかという問いもあります。Photoshopでプロファイル変換してプリンタには従順になってもらうのか、プリンタメーカーが推奨する変換を使うのか。同じCMYKでもメーカーによって微妙に色が違うので プリンタに任せたほうが最大限の色域を使えるわけですが、それがディスプレイよりも広い色域を持っている場合は活かしにくい。最終出力に合わせてディスプレイの色を合わせるか、ディスプレイに合わせて出力を制限するか。どっちか選ばないといけない。

iMac Retina 5Kをシングルディスプレイで使わないといけないなんてルールはないので瑣末な問題かもしれませんが、デュアルだとスッキリしないし場所もとりますから。作業環境ができあがっていると機材の変更って意外と大変なんですよね。

一番に気をつけないといけないのは、iMac Retina 5Kで「写真キレー」と思っても、お客さんがその画面を見るわけじゃないってことですね。作業環境では一番優れていて、お客さんの手元では劣化してるというケース。多少はありますが、ネットで見ても綺麗で、ファインプリントも綺麗、印刷も綺麗、どんな光の環境で見ても綺麗。DTPの感覚かもしれませんが、不特定多数の人に向けて作っていくなら そういうのを目指していかないと。最低基準になりがちで難しいんですけどね。

せつない

そんなわけで「iMac Retina 5Kが微妙に欲しい話」でした。微妙に。
もしも、ディスプレイだけを比較するならDELLのUP2414Qが挙がるかな。AdobeRGBを99%カバーする4Kディスプレイです。23.8inchなので185ppiもあります。十分とはいえるけど、先々を思うと不安も半分。それに23.8inchだとA4縦の原寸がわずかに収まらない。北米はA4ではなくレターサイズなので平気なんです。紙にしろインクにしろ日本の仕様がちょっと変わってるんですね。なんにせよ4Kディスプレイは現状ではMacやPCの側の対応に不安感があり機器の相性を気にしだすと精神に悪い。一体型のiMac Retina 5Kはいいポイントを突いてますよね。

最後に繰り返しになりますが、4KコンテンツがなくてもiMac Retina 5Kの表示は綺麗です。ピクセルが補間されたって画素密度は細かいままですから、ちゃんとベタがベタに見えます。100ppi前後だとザラっとした質感があるせいで、光沢紙にプリントすると表示よりもツヤツヤして見えたりしてました。iMac Retina 5Kなら始めからフィルムにプリントしたみたいに見えます。

高密度のディスプレイ自体はApple以外のメーカーからも出てくると思うけど、OSレベルからの対応の仕方などのRetinaの扱いについてはAppleに軍配があがるところ。Retinaは画質の驚きじゃなく日常的な使いやすさなんだ、という人には大変良いんじゃないでしょうか。私もクッキリした表示が欲しいな。

3 コメント:

  1. I am interested in "iMac Retina 5K" ! It about time I buy a new display...
    My display is TN Panel . I have felt the difference between actual color and my display's color.
    So I want a new one which is displayable actual color and inexpensive.

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    1. Hi, Himmel!
      Importantly, which workflow is better for you, sRGB or AdobeRGB. The sRGB is “Web Standards”, and the AdobeRGB is “Printing Standards”. One way or the other, it is necessary to set up the ICC profile.

      The sRGB monitor is a good price. But the color gamut is narrower than the printed(include ink-jet).
      If you work on printing industries, I recommend the AdobeRGB monitor.

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    2. Hi,Syusay!!
      I think about a Adobe RGB moniter is necessity for good print because I haven't get good print in spite of setting up the ICC profile.
      I will become photographer .

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