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SIGMA 山木社長のインタビュー読んだりした1週間

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10月になりました。日差しがあると暑いくらいですが 海で泳いでる人はいませんね。斜陽が波頭に輝いてキレイでした。


さて、またカメラの話題ですが(チラ裏ですね)、フォトキナに関連して 先週までに各社の担当者がインタビューに応えていました。出揃うと面白いもので、各社・各人の立場の違いでコメントの焦点が異なるのがよくわかります。
SIGMAユーザーにとっての、我らの山木社長は(笑)、コメントの潔さが清々しかったですね。私が注目したのはCNETの記事。

Sigma CEO leads premium push in camera market (Q&A)

この記事について、私とは意訳が異なりますが全文を扱ってくださってるブログがありましたので ご紹介いたします。翻訳してくださる方がいると助かりますよね。こっそり感謝しています。

シグマは高級レンズでカメラマーケットをリードする(その1)─ 写真あれこれ

一応、全文を読んでない方にもわかるように ここからは進めていこうと思います。かいつまんでというより私が気になったところを一部だけ触れています。

さてさっそく、インタビューの最初の質問、「なぜ高品位製品だけをつくるようになったのか」に対しては経営者として応えています。山木氏は理由は2つあるとしながら、まず次のように明言してます。

Sigma is still a private company, family owned. I have a responsibility for all employees and employees' families. My first priority is to protect the employees. 

シグマはまだ株式非公開企業であり、家族経営だ。私には全ての従業員たちとその家族に対しての責任がある。私が最も優先していることは従業員たちを守ることだ。

この部分には大きな意味があり、私に多くを想像させます。SIGMAは従業員数でみれば大企業に分類できるほどですが、経営の観点では多くの中小企業と同じにみえます。端的には「受け継がれる」ということです。実際にインタビューの中では、カメラメーカーになるという亡き父の夢について触れています。また、特徴のあるレンズを作るという伝統についても同様です。私は、このようなスピリットは家族経営のほうが強固に残りやすいと思ってます。
株式を公開している上場企業ならば、こうはいかないときもあるでしょう。投資家の影響力が生まれれば 儲けを出すことに多方面からのプレッシャーが生まれてくるはずです。

例えば 他にも、

How successful is the camera business for the company financially?
─ Not at all. [Laughs] 


会社の財政面でみたときのカメラ事業はうまくいっていますか?
─ 全然ダメ(笑)


山木氏は経営者として「情熱を注げる事業の重要性」と「カメラ事業とレンズ事業の相乗効果」を示していたので インタビュアーはこの質問をしたのでしょう。カメラ事業が社内に好循環をつくってるのは間違いないですが、続けるためには儲けを出さないと難しいはずですから心配です。もしも株式を公開していれば投資家の反応は厳しいかもしれない部分ですね。

これについてはカメラからSIGMAに触れた私としては複雑な思いです。仮に上場できるなら 多くの投資によってカメラは飛躍的に進歩する可能性もあり、しかし反対に撤退のプレッシャーがかかることも想像できます。結論として経営方針は現状維持で、今以上のスピードでカメラが更新されることはないと予想することになります。すこし残念でもありますね。

私は機材をポンポン買えるわけじゃないので、せめて応援のために「シグマのカメラを仕事で使ってますよ!」とアピールしておきます(笑)



現代のレンズ開発の様子が垣間見えるコメントもありました。コンピュータはレンズの設計・開発にどれほどの変革をもたらしたかについて、回答の一部にこうあります。

But it took 20 minutes or 30 minutes to make through ray tracing. Now the PC can do it in 30 seconds. 

(かつては)レイトレーシングに20分から30分かかっていた。今では それが30秒でできる。

レイトレーシングとはコンピュータグラフィックスで光線を物理学的に正しく計算する処理のことです。私が15年前に3DCGを使ったときでさえ 非常に時間のかかる処理で、表現としてガラスや水を正しく再現することは わざわざやるようなことではなかったです。グラフィックをやる人間ならば 反射や屈折を制限して それっぽく見えればいいという程度に処理を簡略することができますが、レンズを設計するなら事情が違いますよね。可能な限り正確に計算しないといけないので試行が大変だったはずです。

ところが、今では それが少ない時間でできるようになっている。

極端な話、一般の3DCGソフトでもレンズをシミュレートできます。どういう構造だと どう写るのか、実物を作る前にわかります。その環境は昔からあったけど、実行するのは現実的じゃなかったんです。それが変わった。おそらくレンズの設計は職人芸ではなくなってきているということかなと思います。そしてこのたび、2ラインから150-600が登場するのは その証拠になるのではないかと。設計の負担が軽くなれば、そのぶん新しいことができるということの例だとみています。

変な話かもしれませんが、レンズエレメントだけ何種類も用意してもらって、配置はユーザーが決めるなんてことも可能かもしれません。そのとき、鏡筒は3Dプリンタでつくる。セミオーダーメイド、またはインディーズ・レンズなんて考え方です。参考に化粧品業界のOEMがあります。耳慣れない化粧品メーカーがCMしていたりするでしょう? あれはOEMで製品を作ってもらっていて、自社では主に開発とプロモーションをしている企業です。

同じようにして、「著名な写真家が画作りを監修したレンズ」なんて売り出し方だったり、「有名レンズデザイナー」や「レンズブランド」なんてものもありうるでしょう。ツァイスは すでにそうなってますが かなり権威効果のあるブランドですから、斬新な画作りを特長とするブランドが新しく出てきても不思議ではないような気がします。ロモがおこなったクラウドファンディングからのペッツバールレンズにも近い感覚がありますが、要するに 今まで以上にニッチな製品を商品として成り立たせる環境が現代には整いつつあるんだと思います。


先週の続き。いずれ雪に埋もれるが 若葉を出すことを惜しまない。最終回にしよう。

新たな芽が出てきたところで、最後はインタビューに沿ってフルサイズ化の流れについて思うことに触れて終わります。

It's quite challenging to make really fine optics for full-frame when you look at the corner of the image The lens becomes bulkier and costly. The APS-C has advantages to make really good optics.

画像の周辺部を見たりすれば フルフレームで本当に良い画を得るためには難題に取り組まないといけない。レンズは巨大で高価なものになってしまう。APS-Cは本当に良い画を得るための強みがいくつもある。

勝手な予想ですが、私はフルサイズ化は ほとんど失敗するんじゃないかと思ってます。理由はシステム全体の重さが ちょうどよくないからです。軽快に扱うにはフルサイズのシステムは微妙に重すぎる。腕力の話ではなく慣性の法則による問題です。使用者の体重があれば体幹部の重量によって相対的にカメラを振り回しやすいのですが、特に女性や 小柄なアジアの人たちにとっては重たいシステムは扱いにくいでしょう。一方で、カメラを三脚に据えて じっくり撮るのであれば より巨大な中判が選ばれていくような気がします。そんな撮り方するのはハードコアな人たちで、フルサイズを超える高画質を追い求めていくはずだと思うからです。

それと心理学的な観点になりますが、フルサイズやフルフレームという言葉に騙されていると思います。人間は完全であることに安心するので「フル」という言葉に反応してしまって、フルサイズが最も良い選択に思えるんです。35ミリとかライカ判と呼んだほうがよかったけど、ここまで浸透していては手遅れかも。というか、大手が狙って宣伝に使ったんだと思います。私なんて中判とフルサイズって どちらが大きいのかわかりませんでしたから、そういう初心者の頃はフルのほうがいいもんだと思うでしょう? 中判って2分の1サイズみたいに聞こえますよ。コピーライターは言葉を変えたがるでしょうね。

結局、取り回しのよさでAPS-Cとマイクロフォーサーズが伸びていくと思います。ビジネスマンは多芸化しているので、例えば 記者とカメラマンというものが記者兼カメラマンになっていますし、私もデザイナー兼カメラマンなわけで、その他の持ち物が増えると巨大なシステムは敬遠してしまいます。意外かもしれないですが 新聞社の記者でもコンパクト機を使ってることがあります。取材をする人間は ときにエレガントでないといけないので、小さめのカバンにメイク用品やエチケット用品が詰まっていて、大きなカメラなんて持てないです。

あと、まだ予測が難しいのは媒体の大きさです。レンズやカメラは中間処理の段階にすぎないので、アウトプットが何になるかによって求められる機能も変わってきます。今、Appleが5KディスプレイのMacを発表するという噂がある中で、今後に媒体の側がどこまで巨大になったり高解像になったりするかです。写真のデジタル閲覧は通信速度の影響がまだ大きく、サムネイルから全体表示までのタイムラグがユーザー体験を低下させているのが現状です。通信速度がクリアされないと なかなか大きな写真は求められてこない気がします。プリントでもSD1でB0サイズまでいけるので、今後のトレンドはセンサー面積を広げることよりも いかに “純度” を高めるかでしょう。ローパスレスなども量より質を高める方向性の変化です。ソニーが曲面センサーを作ってるといわれていますし、センサーは注目ですね。勢いと技術力からいえば LCDもEVFもスマホ連携も得意そうなサムスンがいますし。



まぁ、APS-Cでも わりと重たいんですけどね。

かつて私の中では、DP買うときはPENが、SD買うときはOM-Dがライバルでした。マイクロフォーサーズってイイトコ突いてます。Foveonセンサーも昔のサイズを今のプロセッサで処理したら速いんじゃないの?って思うんですけど、そういうのは出してくれないかな。DCとDNが主力になれば ありうるのかな。大手のフルサイズ戦争が決着しないうちはDGを増やさないといけないでしょうし、開発にジレンマありそうと思ったり。


このくらいにしておきましょう。私事ですが10月も休日の仕事が多いせいで レンズ購入に踏み切れなそうな、というか忙しくて注文を忘れるような状況なんですが、心の中では ほぼ決まってます。30か35ですね。標準画角の単焦点は、操作性の面でみても必要でしょう。ズームだとうっかり動いちゃうことあるから。さぁ、頑張って決めて 注文しておこうかな。近況でした。それでは。

…今週の写真はすべてSD1 Merrillによるもの。DP1xはおやすみです。

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