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500px, best of 2014に学ぶ (1)

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500px ISOから画像を引用しています。

少し時を遡って、500pxから発表された 2014年のベスト写真および各部門トップ10を眺めてみます。テンポラリーにトップを飾る写真は数あれど、運営が選出した年間トップ写真の数々は「さすが!」という他ないです。素晴らしい ─じつに欲しくなる─ 写真ばかりです。
僭越ながら、今回から2回にわたって『良い写真作品』について、500pxの風景部門トップ10に選ばれた写真を例にしつつ ご説明してみようと思います。ゆるゆるとお付き合いくださいませ。(トップ10はリンク先 http://iso.500px.com/best-of-2014-top-10-landscape-photos/ )


このテーマを書くにあたって風景写真に焦点を当てる理由からご説明します。結論を書くと『話題が好ましい』ためです。

アート作品を買う人はアートファンであるか富裕層であるか、あるいは その両方です。そういう人たちは買った作品を保存しておくよりは飾ることを好みます。そして次が重要な点ですが、買った人(オーナー)は作品を観ながら来客と『語らう時間』を楽しむのです。このときに政治や信仰の問題を想起させるものは好ましくありません。しかし、風景は話題としてニュートラルなので好ましいのです。

会話のパターンを想像することが肝要です。写真を眺めながらオーナーが語りかけます─「きれいな場所だろう?」 それから?「ここに行ったことがあるんだ」 ─お気付きの通り、旅行写真も風景写真と同列に扱われます。ストーリーのある写真は優れていますが、大切なのは『オーナーが語れるストーリーがある』ことです。これを踏まえて本題に移っていきます。

条件:有名な場所

会話が弾むのは どんな条件のときか? ─お互いに同じテーマについて知っているとき。ですので、被写体となる地勢は有名な場所が良いです。
作品づくりにおいて有名な場所に新たな視点を加えるのは常套手段です。この場所には行ったことがあるけど こんな景色は見なかった、という感想は再訪する動機になります。有名な場所ほど新しい視点を与えるのは困難になります。しかし、既視感と新鮮味の両立は常に挑むべき課題であり、その姿勢自体が評価の対象にもなります。

条件:特徴的な地勢

場所が有名になることの条件とも重なっており、被写体となる地勢がパターンに合致する特徴を備えているべきです。風景部門トップ10の中には『一つ山』を写したものが複数あります。これは大陸では特に人気のある地勢として知られるものです。富士山のような一つ山は世界的には珍しい地勢だからです。物語 ホビットの冒険の中で『はなれ山』が旅の目的地として登場することなどからも その非現実感と憧れを想像できるかもしれません。

条件:手間をかけてある

商家出身の知人は「寿司は御馳走じゃない」と言います。なぜなら人の手があまりかかっていないから、そういうものを有り難がっちゃいけないと言うのです。
お金は海や山では獲れません。本質的に同じ人間から奪っているものです。ですからお金は人に還元されないといけない。本当の富裕者は そう教育されているものです。
彼らは努力への対価と将来への投資としてお金を与える立場です。作品から感じられるバックグラウンドとビジョンを評価するのです。

条件:高潔である

一端を表現するならば オーナーに恥をかかせない作品であることです。お金に余裕のある人が好き放題に贅沢品を求めていたら反感も買うことになるでしょう。それは富裕層の中でも同じです。彼らにも交遊関係があり、人間の格があります。
そして工業製品と違い、芸術品には適正価格がありません。よってオーナーは作品の査定を通じて人間力を試されます。バイヤーに委任したとしても人間を見抜く力を試されるので同じことです。
翻って作家としては真摯に作品をおこなうことを絶対に守らなければなりません。手間が大切といっても、同時に品位も高く保つ必要があります。万が一にも下品なものを買わせてしまったらオーナーに恥をかかせることになるでしょう? そうでなく オーナーの格を高める作品が良い作品です。

………

さて、もしも私がバイヤーの立場で日本の主人(お客様というより御主人様)にトップ10から作品を選ぶとしたら、どうしましょう?
う~ん、私の推しは jaewoon U氏の Memory of spring ですね。
これはスクリーンショットによる引用です。冒頭のリンクから高解像度の作品をご覧になってください。
次回はその理由を述べながら もっと細かい技法の話をしてみたいと思います。

2 コメント:

  1. あけましておめでとうございます。(すでに10日ですが)
    Syusayさんの投稿を今年も楽しみにしております。

    Best of 2014: Top 10 Landscape Photos どれも素晴らしいですね。
    オーナー視点でどういう写真を選ぶのかという話、非常にためになりました。
    すごいなぁで終わらずにそういった色々な観点から、物事を見ていけるようになりたいものです。


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    1. Himmelさん、あけましておめでとうございます。
      じつは、写真にご興味があるなら もしや、と思って書いてみました(あざとい)

      今回と次回はわかりやすさのために作家とオーナーの関係で書いてます。その他にも美術品リースサービスやストックフォトサービスの観点などがあるでしょう。これも(覚えていたらw)そのうち書きたいです。

      そうそう、自己の観点を明らかにする簡単な問いがあります。「誰のために写真を撮るのか?」…自分のためなら趣味。他人のためなら仕事です。「撮りたい」よりも「自分が撮らないといけない」という使命を感じている人は真摯で信頼できますね。

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